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綺麗にあいたボーラーこそが、エンブロイダリーレースの命です。




 

Embroidery ~Broderie

刺繍レースをEmbroidery Laceと呼ぶのは、日本を含む極東アジア界隈だけです。
和製英語との説もあります。どうなんでしょうか?
ここでは、Embroidery Laceと言わせてもらいます。

日本に導入されたのは大正12年、 ドイツより東京都内の日本製紐に納められた、
と記録に残されています。
この会社は、名前のとおりパラシュートの紐なども作っていたそうで、後に東邦レースと
名前を代えます。
戦争中には何度も鉄屑になりかけたらしいのですが、無事に激動を乗り越えました。

エンブロイダリー機は、前述のリバー、ラッセル、トーション機に比べ圧倒的に大きな
機械です。
スイス・サウラー社のデーターを参考にすれば、上下に1250mm動く機械で、
高さ(床面より)4.52m、設置場所の高さ4.7m、地溝の深さ0.93m、長さに関しては
22ヤード機(20.1m)で長さ25.3m、重量は36トンとあります。
二階建てを平屋にした体育館のイメージでしょうか。
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注:日進月歩の技術革新で、22ヤード(20.1m表示)28ヤード(25m表示)の機械が登場しています。
日本に導入されたとは、まだ聞いてません。
同社によれば 10.6ヤード/9.7m/針数360本、15ヤード/13.91m/針数514本、
16.3ヤード/14.9m/針数552本、 22ヤード/20.1m/針数744本、となっています。
御参考までに。

現在日本にある機械は、長さ15ヤード と21ヤードの2種類が多いのですが、
中でも一番台数の多い15ヤードの機械です。
長さに対して510本~520本(13.7m~14.0m表示)の針が1インチごとに装備されています。
ところで、ここでの1インチは2.54cm ではありません。1インチ/2.7cm なのです。
1インチ/2.7cm はフランスインチと言い、刺繍レース業界標準になっています。
日本にも尺間法があった様に、その昔ヨーロッパには各国独自の計量単位が存在してたのです。
柄の大きさ(リピート)は、この針間で決まって行きます。

針間 2.7cmの送りの柄をインチゲージと業界では言っています。
何故か解りませんが4/4(よんよん)とも言います。
以下5.4cmの柄を2インチ柄若しくは8/4(しはち)、8.1cmの柄は3インチ柄、
若しくは12/4(しのじゅうに)と続いていきます。
3/4(しさん)ゲージとか6/4(しろく)ゲージといった特殊な針間の柄も存在しています。

注:Embroideryの場合は、柄の送りの大きさによって何インチ柄と呼びますが、
Raschelの場合は、巾に対して(細巾を作る場合)何インチ柄と呼びます。
この時は、1インチ/2.54cmで設計します。ややこしいですね! 
巾は、インチ表示、長さは、ヤード表示が、世界標準の生地規格になっています。

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上下2段同時に動きます

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モニターで運針を確認します。

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パンチングマシーンです。


最近では、片段や、左右2段なんて機械もあるようです。見た事ありません。
又、巾に対して50cm動く機械をスタンダード、100cm動く機械をジャイアント、
120cm稼動する機械は、スーパージャイアントなどと呼びます。
子供番組のヒーローみたいなどと笑わないで下さい。
全面に刺繍するオールオーバーを作るときには、結構な問題になるのです。
機械の長さは、現在では15ヤード 21ヤードの2種類です。上下2段同時に動きます。
最近では、片段や、左右2段なんて機械もあるようです。見た事ありません。
孔を明ける為には、ボーラーと言う錐(キリ)を付けます。

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ボーラー付きです。

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シャーリング作業中です。

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補修は名人芸です。

        
刺繍する基布によって色んな種類があります。
綿のような布帛地に加工したものが極一般的です。

Tulle地に刺繍すれば、Tulle Lace(チュールレース)となります。
Tulleネット自体は、ラッセルレースです。
10年程前までは、ナイロン100% のネットが殆どでした。
常温で染まり易いポリエステル糸が開発され、ポリエステル100%Tulleも急速に普及しています。
ネットも刺繍糸もポリエステル100%が、インナー業界の主流に成りそうです。
メロンTulle等と言うおいしそうなネットも使われます。

Chemical Lace(ケミカルレース)の場合は、
水溶性ビニロン(ソルブロン)や水溶性の不織布(ソルシート)に刺繍した後で基布を溶かします。
基布を溶かす作業を溶解と言います。
その昔は、シルクの基布に化成ソーダなんて危険な溶解方法っだったらしいです。
こうなると命懸けですなー。
基布を熱によって粉にしてしまう方法もあります。マタイ加工と呼びます。
インテリア関係で使用されます。
カーテンの裾に付けるケミカルレースをマクラメと呼んだりします。
本来の伝統的マクラメレースとは、違った言葉の使い方をしています。

糸の掛け方や 表糸、裏糸の変化 パンチの打ち方 刺繍方法 後加工等 本当に
色々なテクニックがあります。
先人の知恵を見る様でただ感心するばかりです。
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良く調整されたボーラーと滑脱寸前まで計算されたパンチング。
「何と言うこと無い」と思われる様な 綿の細幅レースを、くれぐれも侮ってはいけません!
これこそが、エンブロイダリーレース の魅力なのです。

戦後、前述の東邦レースが東京都から埼玉県に引っ越す折に、分解、組み立てを請け負った
日立が国産初のエンブロイダリーマシーンを開発しました。
そして特許等の問題から、それを引き継ぐ形で平岡製作所が平成に入るまで生産していました。
残念ながら現在、日本にエンブロイダリーレースの機械メーカーは存在していません。

世界のエンブロイダリーレース機械メーカーはフォーマック系とサウラー系の2種類に分けられます。
何が違うかと言えば、製図の倍率が異なります。
フォーマック系は6倍、サウラー系は10倍に拡大したドラフトで目を拾っていきます。
ザンクス、日立、平岡は6倍グループ、サウラーとレッサーは10倍グループです。


残念ながら現在、日本にエンブロイダリーレースの機械メーカーは存在していません。

サウラー (サウラー財閥と呼べるくらいの会社です。)

レッサー (レッサーの機械は、カタログ以外見たことありません。)

上記スイスの2社が有名です。


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